【2021年最新版】最新統計データから見える孤独死の現状とは?もはや高齢者だけの問題じゃない?

孤独死 統計

10年以上にも渡り、社会的に大きな問題になっている「孤独死」。そんな孤独死ですが、孤独死を定義する法律的な言葉は実は存在していません。警察による死因の統計上はあくまで変死として扱われます。そこのように共通の定義がない、プライバシーなどの問題があるといったことから孤独死の件数を正確に捉えた国や都道府県別のデータというものは存在していないのが現状です。

それでは、ニュースや新聞などで見る孤独死の発生件数のデータは、どのように集計しているのでしょうか。2012年の毎日新聞の調査によると、孤独死に関する統計を取っているのは宮城、高知、鹿児島の3県で、宮城県は2008年、鹿児島県は2011年、高知県は2012年から収集しております。

また、東京の場合は、毎年実施東京都監察委員会のデータが孤独氏に関する統計としてよく紹介されており、同意委員会のホームページに掲載されている、『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計』は東京都の23区内で起きた孤独死の件数を比較的正確に表していると評価されいます。

そこで今回は『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計』を使用して2015年から2019年での孤独死の移り変わりについてご紹介させていただきます。

孤独の原因はどのようなものが多い?

地域・社会からの孤立

孤立死の一因として、「地域の付き合いやご近所付き合いが希薄な社会になっている」ことと、「核家族化により高齢者夫婦や高齢者の単身世帯が増えている」など、高齢者が孤立しやすい環境になっていることが挙げられます。人間関係が希薄化してしまい、社会から孤立をしてしまうと何かあったときに頼れる人や気付いてくれる人がいないため、どうしても孤独死の確率は上がってしまいます。また男女ともに未婚率は毎年右肩上がりとなっており、高齢になっても独身である人が増えたため、このことも孤独死増加の要因の一つとなっております。

高齢者の貧困

貧困も孤独死が増加している大きな原因の一つです。年金の受給額の低下や、金銭面で頼れる親族がいないことなどにより高齢者の貧困化が進んでいます。体調が悪くても医療費が払えないなどの理由で普段から病院に行かず、手遅れになるまで病気を放置していたり、手遅れになっていても気付かずに放置されていることも多々あります。

そのような場合、突然具合が悪くなってしまい救急車を呼ぼうとしても、その後の治療費を考えたら救急車を呼べず、手遅れになってしまうなど貧困からくる孤独死も増加していると言われています。

熟年離婚やパートナーの死等

熟年離婚やパートナーの死といったことも、孤独死に大きな影響を与えているようです。特に高齢男性に当てはまるのではないでしょうか。60代以上の男性は現役時代は働きづめで、家事は奥さん、つまり女性まかせで生活していた方が多い世代です。そのような方が、熟年離婚や伴侶の死等によって、突然ひとり暮らしになると、掃除ができないため部屋の中は散らかし放題、食事はコンビニ食やカップラーメン等となってしまい、生活の質が急激に低下し、栄養バランスや健康管理の面でのリスクが急激に高まります。

また、「誰かに頼ることは恥ずかしいこと」という価値観がある世代でもあるので、周囲に助けを求めることができず、孤立してしまうということもあるのではないでしょうか。

男女での傾向はある?どちらが多い?

以下のグラフは『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和元年)』から作成したものです。

80歳以上と15~19歳を除く、ほとんど全ての年代において男性の孤独死の発生件数は女性の孤独死の発生件数に比べると多いことが確認できます。グラフ上の黄色い線は男性/女性が1以上の場合、男性の死亡者数の方が多いことを示しています。

このグラフからは65歳以降、孤独死の発生件数が急激に増加することが読み取れます。また、その際に男性の死亡者数の割合がピークとなっているので、独身男性が定年退職後に孤独死として亡くなってしまうことなどが読み取れます。

また、厚生労働省『令和元年簡易生命表の概況』では、2019年日本人の平均寿命は女性87.45歳、男性81.41歳でした。80歳を過ぎると同年代の男性の孤独死発生件数よりも女性の孤独死発生件数が増える理由は、寿命によって同世代の男性の数が少なくなり、必然的に女性の死亡者数が増加するためだと推測されます。

なお、『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和元年)』では孤独死をされた人の総数の65%が男性でした。日本少額短期保険協会『第5回孤独死現状レポート』では全国の孤独死者(n=3,698)における男女の比率はおおよそ8:2となっており、全体の約8割が男性でした。このことからも女性よりも男性の方が孤独死になってしまう可能性が高いことがうかがえます。

男性の方が女性よりも孤独死をしやすい傾向に

『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和元年)』では孤独死の65%が男性による孤独死で、また他のデータでは約8割が男性であることをお伝えしました。いずれにせよ孤独死で亡くなってしまう確率は男性の方が高い傾向にありますね。定年退職後のライフスタイルや、「困っている時に誰かに頼ることは恥ずかしいことである」と考える価値観や文化に起因していると思われますが、その他にはどのような原因があるのでしょうか。以下では男性に孤独死が多発してしまうことをより詳しく考察しましょう。

なぜ男性の方が孤独死をしやすいのか

男性は女性よりも、日常的な人付き合いや、ご近所付き合いが苦手な方が多い傾向があります。また会社での人付き合いの方法しか分からずに定年退職後に社会との接点がなくなってしまい、社会的に孤立してしまうケースが少なくありません。

また、従来の価値観や傾向として本当に困ったときに助けを求めることができず、病気で動けないなどの緊急事態でも、誰にも気付かれないまま手遅れになってしまうケースもかなり多いと言われています。

健康管理を含めた身の回りのことをすべて妻に任せきりにしていた男性は、妻に先立たれてしまうと家事ができずに困ってしまう事も少なくありません。また、ご近所付き合いも妻に任せっきりにしている場合、妻がいなくなってしまうと、自信の健康管理もままならない上に、突然社会から隔絶されてしまい、何もできなくなってしまうのです。

男性は配偶者が亡くなってしまうと突然無気力になってしまう傾向が女性よりも強いと言われています。妻を亡くしてしまい、自分の健康状態が悪くなくても改善する気力がわかず、セルフネグレクトのような状態になってしまう方もいます。自分の健康状態がどんなに悪くなっても、放置してしまい気が付くと孤独死をしてしまう事になってしまいます。

そういった事情から男性は女性よりも孤独死をしやすい傾向があると言われています。

どの年代の孤独死が増加している?

以下のグラフは東京都監察委員会のホームページに掲載されている、『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計』を基に作成した孤独死の推移です。

2013年から2019年の間で孤独死が徐々に増加していることがわかります。2013年から2019年の期間中はに東京都のみで1,000件近く孤独死が増えています。全国の孤独死の3分の1は東京23区で起きているというデータもあることから、この増加率は国という大きな視点で見ても、かなりのインパクトがあります。

また、50歳以上全体では2015年度と比べても2019年度は孤独死をされた方の人口は1.13倍に増加していることも以下のグラフから読み取れ、孤独死発生件数の多さを再確認することができます。

特に、孤独死の増加率が一番高かった年代は75~79歳で、2015年度と比較すると2019年度は1.216倍に増加しています。増加する高齢者の孤独死を防ぐために、早急な孤独死対策が必要そうですね。

高齢者の数が増えているため孤独死も増加しやすい

言うまでもなく、日本は少子高齢化社会です。高齢者の人口割合も年々増加しており、2020年現在では国民の28.3%が高齢者となっております。(総務省の推計より)65歳以上の高齢者の人口が増えていることから、高齢者の孤独死が増えています。また今後も日本は少子高齢化が進んでいくと予想されていますので、高齢者の人口は今後コンスタントに増えていきます。高齢者の人口の増加に伴ってしばらくは孤独死が増加すると専門家は予測しています。

ご年配の方だけではなく若年層も増えています。

近年では仕事をきちんとしていても、定期的に連絡を取り合う友人や家族がいないなど社会から孤立している20・30代の若者が少なくありません。特に2020年のコロナウイルス蔓延期には、物理的に外出ができなかったため、その傾向に拍車がかかりました。外出もできず、経済状態を悪く、収入も得られない、そんな若者がひっそりと孤独死してしまうと言う状況が少なからず発生してしまいました。

家族との関係が悪くなくても、家族が「若いからあまり心配しなくても大丈夫」と、突然の孤独死に気付けないパターンも少なくありません。そのため、若年層の孤独死も年々少しずつですが増えています。

『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計』から、20代・30代の東京都特別区での孤独死は毎年350件前後です。特にいわゆる「アラサー世代(25歳~34歳)」に限って言えば、ここ数年孤独死の件数は若干の増加傾向を見せています。

突然の心臓発作などで倒れてしまい、誰にも気付かれずに孤独死をしてしまう場合と、貧困や精神疾患などによる餓死のケースがほとんどです。そして死後数日誰にも気付かれないまま、近隣住民に発見されるケースが少しずつ増加しています。もはや孤独死は高齢者だけの問題ではないことを考えせられます。

まとめ

以上が孤独死に関する統計・データのまとめです。最新の東京都のデータから分かった孤独死の現状は50歳以上の世代で年々増加しています。25歳から34歳の若年層でも年々増加しており、年配の方だけでなく、若者の問題にもなりつつあります。今現在元でも孤独死は自分にも起こりうるということを忘れないでください。そして、身近に孤独死リスクを抱えていると思われる人がいる場合は、連絡を撮るなどして、積極的にサポートをしてあげてくださいね。

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この記事の執筆者
兼島剛
webメディア系の会社、コンサルティング会社に勤務後、現在はフリーランスのライターとして活動中。ライティングの際は現地取材を徹底して行うなど現場に密着した記事がウリ。得意ジャンルは政治経済、暮らし・ライフスタイル。特掃ジャーナルにも複数の記事を寄稿中。