「特殊清掃という仕事に興味があるけれど、どうやって仕事を探したらよいかわからない」というお悩みはありませんか?
特殊清掃の仕事を探すには、直接企業に募集がないかと聞いてみることがおすすめです。なぜなら、求人情報が少ないからです。ただ特殊清掃の仕事を見つけるだけでなく、仕事を続けていかなければなりませんよね。今回は、特殊清掃の仕事を続けていくために必要な資格も紹介します。後から後悔しないように、特殊清掃に向いているかどうかにも触れていきますので、ぜひ最後までご確認ください。
そもそも特殊清掃とは
特殊清掃とは、清掃業のひとつのジャンルです。
以下にあるような現場の原状回復をさせる業務のことを指します。
- 事件や事故、自殺などの変死現場
- 孤独死、孤立死などにより、遺体の発見が遅れ、遺体の腐敗などのダメージを受けた現場
これらの現場の清掃、脱臭、補修などを行い、原状回復させる仕事のことを特殊清掃といいます。
特殊清掃員のなり方
特殊清掃員となるには求人募集を探して応募します。基本的には特別な資格は必要ありません。
求人募集には次のものがあります。
- ハローワーク・新聞折り込みの求人
- 求人サイト
- 特殊清掃業者のホームページ
- すでに特殊清掃の仕事に就いている知人などの紹介
特殊清掃の仕事は、熱意と責任感が大切なので、ありとあらゆる方法を試すことがおすすめです。
特殊清掃の仕事内容とは
特殊清掃の仕事内容とは、大きく分けてふたつに分類されます。
- 現場に入る前の消毒、除菌の作業
- 現場に入った後の本格的な清掃業務など
それぞれ内容を見ていきましょう。
1.現場に入る前の消毒、除菌の作業について
現場に入る際には、消臭・除菌をします。自己防衛と近隣・他者への配慮のためです。薬剤を噴射して、臭いの元となる菌をなくし素早く消臭します。消臭・除菌作業後に、現場に長時間入っていても問題がない状態となってから、ご依頼に合わせた「掃除業務」を行う段階に進みます。
2.特殊清掃の仕事内容について
現場に入った後の仕事内容(清掃業務)は次の5点です。
血液や体液の除去
壁や床に染み付いた血液や体液を、取り除く業務です。特殊な洗剤やブラシなどを使って、できる限り取り除きます。
フローリングなどの取れない汚れは、木材を張り替えるなどの修繕を施す場合もあります。
死臭原因の除去
特殊清掃の現場には死臭が漂っています。その臭いの元を取り除きます。死臭の主な原因は布団です。ほかにはベッド、床、フローリングまで死臭の染み付いていることがあります。
害虫駆除
遺体は細菌が繁殖しやすく、そこに害虫が大量発生します。夏には早くて2日程度、冬は一週間で腐敗度合が進みます。腐敗が進むと、遺体からは体液が流出し強烈な死臭を発生するのです。そこにハエやゴキブリなどという害虫が群がり大量発生となります。これらの害虫駆除を行う仕事です。
悪臭の除去
特殊清掃の最終段階で、最終的な悪臭除去を行います。それまでの作業では落ちなかった悪臭を徹底的に除く作業です。特殊清掃用の消臭剤ならびに消毒剤を使用し、仕上げにオゾン脱臭機を1~2日稼働させることもあります。
退室後の自己ケア
現場から退室した後に必ず行うものが、自分たちへの除菌・消臭作業です。自分が起点となり、周囲に危険が及ぶのを防ぐためです。菌や感染症予防のためでもあります。
着ていた作業服の廃棄(2重にして廃棄します)、現場で直接触れた身体の部分はしっかりと除菌・消臭を行います。
遺品整理の仕事
遺品整理も特殊清掃の仕事のひとつとなる場合があります。次の2点があります。
遺品整理作業
遺品整理作業とは、残された遺品を分類し撤去する作業です。次の3点に仕分けして、撤去します。
- 残すもの
- リユースやリサイクルに流すもの
- 廃棄するもの
ご供養の手配
ご供養の手配も特殊清掃の仕事です。特殊清掃の現場には、神棚、仏壇、位牌から、人形、思い出の写真・・といったものが残されていることもあります。こうした故人の思いが込められたものには、僧侶などにご供養の手配をします。
特殊清掃員はご遺族の気持ちに寄り添うことも大切な仕事のひとつです。
ゴミ屋敷清掃の仕事
このほかに、ゴミ屋敷の清掃という仕事も特殊清掃になります。ゴミ屋敷の中にあるゴミや不用品をトラックまで運搬して、回収し処分するという仕事です。
いずれも重労働で慎重さを要し、過酷な環境下の作業となるため相当な覚悟が必要でしょう。加えて、ケガのリスクもあり、ゴミの倒壊にも注意が必要な作業です。
「特殊清掃の求人」4つの探し方
これまで特殊清掃の仕事内容について見てきましたね。ここからは具体的に、特殊清掃の求人の探し方を見ていきましょう。次の4つが挙げられます。
ハローワーク・新聞の折り込み求人で探す
ハローワークや新聞の折り込み求人で探す方法です。
特にハローワークに求人を出すことは無料なので、中小企業や個人事業主などの特殊清掃業者を見つけられます。
クリーニング業や清掃業といった分野や廃棄物関連の分野、葬送関連の分野にて特殊清掃に関する募集を見つけることもあります。
なおハローワークで求人を探した場合、その企業や特殊清掃業者のホームページを確認することもおすすめします。求人票には記載されていない内容についても書かれている場合があるからです。
求人サイトで探す
大手の求人サイトでも、特殊清掃の求人が掲載されていることがあります。ただし、求人サイトは中小企業の多い特殊清掃業者には敬遠されがちという側面もあります。求人サイトは掲載料や成約手数料がかかるからです。
とはいえ掲載されていることもあるので、毎日チェックは欠かさずにしておきましょう。
企業に直接応募する
一番確実な方法として、特殊清掃の企業に直接応募するという手段があります。
手順は下の通りです。
- 特殊清掃業者のホームページを検索 例:「特殊清掃 地域名」(住んでいる地域名)
- ホームページに求人募集が掲載されている場合は応募する
- 求人募集が掲載されていない場合でも、メールまたは電話で募集があるかと問い合わせる
ハローワークや求人サイトに掲載されてなくても、特殊清掃業者のホームページで募集掲載をしていることがあります。簡単に掲載ができるからです。
また人手不足の場合は、ホームページに求人募集が掲載されていなくても、電話の問い合わせから採用される場合があります。
いずれにしても、そこまでしても特殊清掃の仕事をしたいという「やる気のある人材」を採用したい実情があります。
すでに特殊清掃の仕事に就いている知人などの紹介
周囲に特殊清掃の仕事をしている友人や知人がいる場合には、その知人などに紹介してもらうのも手段です。
特殊清掃ではなくても、便利屋さんや片付け屋さんなどをしている友人・知人でもよいでしょう。近い業界ではあるので、紹介してもらえるかもしれません。
その他:特殊清掃のバイトについて
特殊清掃を正社員などでなく、アルバイトとして探している場合もあるでしょう。バイトの場合も同じ要領で探します。
バイトの給料(相場)については、下のとおりです。
- 時給の場合(相場):1,000円~1,500円(首都圏の場合)
- 日当の場合(相場):8時間勤務で1万円~2万円(首都圏の場合)
- 支払い:その日のうちに支払われる形式が多い
特殊清掃の資格
基本的には、特殊清掃に必須な学歴や資格というものはありません。汚れや臭いに対する知識と、豊富な経験の両方が重要だからです。
しかし、これを踏まえた上で持っていた方がよい資格というものはあります。
次に資格を見ていきましょう。
普通自動車運転免許
普通自動車運転免許は持っていたほうがよいでしょう。すぐに依頼者の元へ移動できるだけでなく、現場に機材を大量に持って行く出張作業になるためです。清掃機材や薬剤の運搬のために必要です。
トラックの運転をする場合もあるため、普通自動車運転免許はAT限定ではないほうがよいでしょう。
また、軽トラックを自前で業務のために用意管理できる人も、採用の際に優遇されるなどがあります。
普通自動車運転免許
事件現場特殊清掃士という資格があります。特殊清掃専門の民間資格で、事件現場特殊清掃センターで資格を取ることができます。
参考:事件現場特殊清掃センター
この資格で習得できることは下の内容などです。
- 特殊清掃に用いる薬剤などの知識について
- 消臭・脱臭の基礎知識について
- 法律的な知識と解釈について
- 心構えや注意点について
仕事をしながらでも資格を取得するなどで、スキルアップを図ることは将来性を豊かにさせることにつながります。
遺品整理士の資格
遺品整理士の資格というものは、遺品整理士認定協力会が養成講座と資格認定を行っています。以下のような内容を習得できます。
- 遺品整理の資格としての心構え
- 廃棄物に関する法律やその必要性
- 円滑に進めるためのノウハウ
このような資格を取得することで、依頼主からの信頼性を高めるという効果があります。
特殊清掃の給料・年収と将来性
首都圏や地方などで差はありますが特殊清掃の給料と年収の相場は月収20万~30万円で、年収300万円~500万円となっています。
その他福利厚生については、充実させている業者が多くみられます。離職率が高いという現実があるからです。
社会保険完備・交通費・残業手当に加えて営業手当や職務手当などが付く会社もあります。
また、年1~2回のボーナスや勤続年数による昇給がある会社もあります。
営業面でしっかりとしている会社であれば安定した収入を見込め、将来性も豊かと言えるでしょう。高齢化社会と共に需要は広がっているからです。
特殊清掃員に向いている人
特殊清掃員に向いている人というのは、どのような人をいうのでしょうか。結論からいうと、強靭な体力と強靭な精神力を持ち合わせた人です。過酷な現場での作業に耐えなければならないからです。
なおかつ、相当な覚悟が必要となります。臭いや見た目から食べられないものが増え、仕事の内容から嫌悪感を持たれるのではと職業を明かせないこともあるからです。
具体的にどのような人が向いているのかを見ていきましょう。
辛い仕事に立ち向かえる強い精神力
特殊清掃員になるには「何があっても動じない強い精神力」を持ち合わせていることが最大のポイントです。過酷な現場での仕事に耐えられず辞めていく人も多いからです。
例えば、お風呂に入りながら亡くなった方の現場の場合、遺体が解けているような状況の清掃をしなければなりません。肉片が落ちていることもあるでしょう。
吐き気を催すほどの悪臭の中、害虫が何万匹もわくような現場に遭遇することは珍しくありません。
そのような現場を乗り切れるかどうか、強い精神力が最も重要と言えます。
匂いのきつさに耐えられる覚悟
世界で最も強烈な悪臭として死臭があります。特殊清掃員はこの死臭に耐えることができるかという難関があります。特殊清掃の現場では、遺体のない現場はないためにどんな現場でも死臭を避けられないからです。
死臭というのは、防護服を着ていても作業服に染み付き取ることが困難という現実があります。
入浴などをして、実際には臭いが取れていたとしても、いつまでも悪臭がしている気になって仕方がないという状態に悩まされる人も多いのです。
とはいえ、特殊清掃の現場では現場の確認のために、臭いが取れているのか判断しなければなりません。鼻があまり効かないという人も仕事ができません。
死臭であっても何気ない顔で気にならない人にならなければ、仕事ができないことになります。
強固な体力と自己管理能力は必須
特殊清掃員として働くには、強固な体力と自己管理能力は必須です。
清掃だけではなく汚れた大型家具などを運ぶ場合もあります。現場によってはエレベーターがない、トラックが横付けできない場所もあり、遠くまで持ち運ぶこともあります。
特殊清掃は防毒マスク、ゴーグル、防護服を着用しての作業となるため、夏場はもちろんのこと、春秋でも強烈な暑さと闘わなければなりません。
さらには、緊急性が高い仕事が多く休みは不定期です。連日仕事をすれば体力が尽きていくでしょう。
ですから休日にはしっかりと身体を休めさせるなどの、自己管理能力も必須となります。
社会貢献の意識がある「この仕事のやりがい」
特殊清掃とは、深刻な高齢化社会のニーズから生まれた仕事です。誰かがやらなければならない仕事だという社会貢献の意識が必要となります。
孤独死が出たアパートの大家さん、身内が自殺してしまった遺族の負担は非常に大きく、そこに実際に手を伸ばすことのできる仕事です。
悪臭や害虫に困っていたご近所やご遺族から、「ありがとう」「助かります」という感謝の言葉をもらうたびにやりがいと達成感を覚えることでしょう。
そのような社会貢献の意識をもつ人はこの仕事に向いていると言えるでしょう。
特殊清掃の仕事を探すなら企業に応募がおすすめ
特殊清掃の仕事の中身や仕事の探し方を見てきました。特殊清掃の仕事を探すなら、企業に直接応募することがおすすめです。困難を極める仕事なので、それほどのやる気を見せることがまずは大きなポイントと言えるでしょう。
仕事を続けるために必要な資格や、強靭な体力と精神力が必要だということも見てきました。また、特殊清掃の仕事には社会貢献できるというやりがいが大きいです。
特殊清掃への理解を深め、企業に応募することもひとつの選択肢として覚えておきましょう。
この記事の執筆者
webメディア系の会社、コンサルティング会社に勤務後、現在はフリーランスのライターとして活動中。ライティングの際は現地取材を徹底して行うなど現場に密着した記事がウリ。得意ジャンルは政治経済、暮らし・ライフスタイル。特掃ジャーナルにも複数の記事を寄稿中。