不動産に関わる貸主・オーナー様には必須の知識。事故物件と賃貸について分かりやすく解説!

不動産 事故物件

近年、事故物件というワードを耳にする機会が増えています。多くの事故物件に住んだ経験のある芸人が実際に体験したことをもとに作られた映画「事故物件 恐い間取り」や事故物件を地図上に表示するサイト「大島てる」、事故物件のみを取り扱う不動産業者「成仏不動産」によって、事故物件の知名度は上がり続けています。

知名度だけでなく、家族とは暮らさず一人暮らしをする核家族化や高齢者の増加によって、孤独死が増えることで事故物件も増加しています。残された遺族はとても悲しいですし、清掃業者への依頼が必要でとても大変ですが、実は事故物件となって住宅の貸主・オーナーもとても苦しい状況に立たされてしまいます。適切な対応が必要ですし、告知義務などを守らないとトラブルや損害賠償が発生しまう可能性もあります。

今回は、事故物件の定義を紹介した後、貸主・オーナーの事故物件への対応や今後の賃料、売却費用について紹介していきます。

事故物件とは?その定義は?

事故物件というワードを知っていても、どのような物件を事故物件に含むのか、どのような定義があるのかを知っている人は少ないでしょう。事故物件は、定義こそあいまいですが、建物や土地の本体部や共用部で人が死亡している場合や、その他特定の条件を満たしている物件のことを指します。事故物件に登録されている物件は、心理的瑕疵物件・物理的瑕疵物件・法律的瑕疵物件・環境的瑕疵物件の4つがあるため、順に紹介します。心理的瑕疵物件とは、入居することで心への負担や不快感を与える可能性のある物件のことを指します。

基本的には、孤独死・事故・自殺・殺人といった死因によって人が亡くなった物件や、その周辺にある物件が心理的瑕疵物件として登録されます。孤独死は、死後すぐに見つかったものについては事故物件とはなりませんが、死後数日経過し遺体が腐敗してしまったものが事故物件となります。どのような物件でも基本的に御祓いが行われていますが、人が亡くなった家に住むというのは心地いいものとはされていないため、心理的瑕疵物件として物件情報には記載されます。

物理的瑕疵物件とは、建物に物理的な欠陥があり、建物の構造を弱め、最終的には倒壊の恐れがある状態の物件を指します。具体的な例を挙げると、白アリの浸食・雨漏り・水道管の腐敗などです。入居するには、リフォームや建て替えが必要な場合がほとんどとなっています。

法律的瑕疵物件とは、現在の法律で定められた基準を下回っている物件を指します。
具体的な例を挙げると、建蔽率・耐震基準・容積率などです。
これらの基準に満たない物件は、基本的に取り壊しをして販売されますが、取り壊されていない状態で入居すると犯罪になってしまう可能性もあるので注意しましょう。環境的瑕疵物件とは、不動産自体に問題はなく、周辺の環境に問題がある物件を指します。具体的な例を挙げると、暴力団事務所の存在・電車や繁華街などの騒音・高層マンションやビルによる日光の遮断・ゴミ屋敷による悪臭・火葬場や産業廃棄物処理場等の迷惑施設などです。他の瑕疵物件と比べて、基準があいまいなものが多く、当てはまる物件もかなり多いでしょう。

全てを避けるには物件をよく探す必要がありますし、瑕疵物件として記載されていない場合も多いので、自身であらかじめよく確認しておく必要があります。4つの瑕疵物件を紹介しましたが、引っ越しを考えている際には必ず瑕疵物件であるかを確かめましょう。

何をしないといけない?心理的瑕疵と告知義務について

事故物件となってしまった場合、告知義務というものが発生します。告知義務というのは、不動産情報を掲載する際に、瑕疵物件であることを告知していなければならないことです。

4つの種類がある瑕疵物件の中でも、告知が怠られてしまうことが多いのは、心理的瑕疵物件です。心理的物件は先ほども紹介した通り、近年増えている孤独死を中心とした、人が亡くなっている住宅のことを指します。心理的瑕疵物件の告知を怠ってしまう理由としては、事故物件となってから一度でも入居者がいると、それ以降、心理的瑕疵物件であることを告知しないことが多いからです。

告知義務に時効はないため、入居者や所有者がいくら変わっても、告知はしなければなりません。告知をせずに入居をさせた場合、トラブルの原因となり、貸し手側に損害賠償が命じられることもあります。貸し手側は必ず告知義務を守り、トラブルを避けましょう。

続けて貸したいけど賃料はどうなる?

貸し手側としては、事故物件となってしまっても新たな入居者は募集したいですよね。その場合、賃料は事故物件になる依然とどの程度変化するのでしょう。賃料の引き下げに明確な基準はありませんが、相場としては2~3割程度の値下げをするのが基本となっています。

値段を下げる理由としては、事故物件であることを告知するのは義務なので、通常の物件よりも価格を下げないと、入居者が見つからないからです。値段を下げてでも入居者がすぐに見つかる方が、貸し手側には利益になりますからね。賃料を下げていても、時間の経過とともに賃料は元に戻っていく傾向があります。なので、しばらくは2~3割値引きした賃料となってしまいますが、ある程度我慢すれば元の賃料に戻ります。

2~3割程度の値引きをして我慢をし続けるのであれば、いっそのこと売却してしまいたい、という方もいるでしょう。その場合、相場はどの程度になるのでしょうか。売却の場合、相場は通常の物件の1~5割ほど値下げをした価格となります。値下げの基準としては、死因はもちろんのこと、築年数や立地などによっても変わります。

最も値段を左右するのは、死因です。孤独死や自然死の場合は、値下げは1~2割程度で済むことが多いですが、自殺の場合は3割、殺人の場合は4~5割程の値下げとなってしまいます。殺人は不本意な死によって怨念が残っていると信じられ、御祓いをしたとしても高値で売り出されることはとても少ないです。

買い取り価格は、買い手によっても左右されることが多く、人はいずれ死んでしまうものだから、と高値で買い取って貰える場合や、不本意な死を遂げた家に高値は出せない、と安値になってしまう場合もあります。立地や築年数に関しては、駅近の物件や築年数の新しい物件であれば値段は下がりにくいです。

不動産の売却を考えている場合は、不動産一括査定サービスを利用し、できる限り高値で買い取りをして売れる業者を探しましょう。不動産業者に直接買い取りを依頼することもできますが、相場の5割以下で取引されることも多いため、あまりおすすめはできません。

まとめ

事故物件の定義や、貸し手側に焦点を置いて紹介をしました。事故物件が急激に増え始めたのは2000年以降で、まだまだ対応しきれていない部分も多いかと思います。

現在の相場は、通常の物件より2~3割程度値引きしての賃料、1~5割程度値引きでの販売となっていることが多いですが、今後も増え続けることが予想されるため、現在のように極端に安くなることは少なくなるかもしれません。事故物件であることを気にしない方も多いので、そのような方々にとっては、事故物件に住むことは、かなりお得だと思います。貸し手側も告知義務や値引きなど苦労が多いですが、我慢をすることで相場は戻っていくので頑張りましょう。

この記事の執筆者
立花廉
フリーランスのライターとして活動中。エンターテイメント系から子育て、ライフスタイル・生活関連の記事まで月に数十本の記事を執筆し実績も豊富。得意分野はエンタメ・娯楽、社会問題関連のジャンル。特掃ジャーナルにも複数の記事を寄稿中。