孤独死は誰でもする可能性があります。
もちろん自分の家族に起こる可能性もありますし、自分自身も孤独死をしてしまう可能性もあります。
また、今後も孤独死が増えていくことが予想されており、自分自身でも対策をするとともに、身近な人の孤独死を防ぐためにも気を配る必要があります。
今回はどうして孤独死は増えているのかを説明していきます。
そもそも孤独死とは?その定義は?
孤独死を定義する法律的な言葉はありませんが、内閣府の高齢社会白書には「誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な孤立死(孤独死)」と書かれています。「相当期間」とは一般的に2日以上経過した場合に当てはまります。
「孤独死」という言葉は1970年代に一人暮らしをしていたお年寄りが自宅内で死んでしまい、訪れた親族により発見された事件の報道のために作られた言葉です。行政機関では「孤独死」という言葉よりも「孤立死」という言葉を使用するケースが多いです。
他の団体は孤独死をどのように定義しているの?
孤独死、孤立死は人や団体によって解釈が様々なので、様々な定義があります。
ここでは有名な例を取り上げていきます。
UR都市機構では「「病死または変死」事故の態様で、死亡時に単身居住している賃貸人が、誰もが看取られることなく、賃貸住居内で死亡した事故をいい、自殺又は他殺を除く。」と定義されていて、「1週間を超えて発見されなかった事故」とされています。
(2011年12月29日東京新聞より)
平成18年11月16日高齢者保健施設推進協議会資料で発表された新宿区の方針では、「二週間程度に見守るもののいない、独居または高齢者のみ世帯の高齢者」とされています。
どうして孤独死は増えてしまうのか
孤独死は近年急激に増えています。例えば東京都監察医務院が公表している東京都23区内の孤立死での死者数は、2003年では1451人でしたが、2018年には5513人になっています。15年前と比べると、孤独死の総数は約4倍近くになっていることがわかります。
孤独死の増加要因1:核家族化
夫婦のみの家庭や夫婦と未婚の子供による家庭が増えており、従来の三世帯同居などは珍しくなっています。
三世帯同居家庭では高齢者の具合が悪くなった場合に、すぐに同居している家族が気付くことができました。核家族化している現在の日本では、高齢者は夫婦または一人で暮らしていることが多いため、具合が悪くなっても配偶者しか対応してくれる人がいません。
また一人暮らしの場合、具合が悪くなってしまうとますます誰にも気がついてもらえずに手遅れになってしまうことが少なくありません。
孤独死の増加要因2:晩婚化や生涯未婚率の上昇による少子高齢化
年々日本の人口における高齢者の割合が増えており総務省の統計では2020年度の高齢者の割合は28.7%となっており、人口は3617万人です。
核家族化などの影響で高齢者の人口が増えているだけでなく、高齢者の一人暮らしも増えているため孤独死をしやすい属性を持つ人の人口が年々増加しています。
内閣府による『平成29年度版高齢白書(平成29年度版)』では今後も高齢者の人口は増えていき、2042年に日本の高齢者人口はピークを迎え、3,935万人になるだろうと予想されています。孤独死をする危険性の高い人の人口が増えていくことから、今後も孤独死は増えていくでしょう。
晩婚化によって子供を産まない選択をする夫婦の増加や、ずっと未婚の男女が増えていることで子供の出生率が減っています。必ずしも子供が頼りになるわけではありません。
しかし子供が心配をすることで安否確認を頻繁にするなどして、孤独死を防ぐこともできます。また高齢者になってから金銭面に困ったときに、子供に援助を頼むという選択肢もあります。
子供がいないと更に社会から孤立しやすくなってしまうため、孤独死をする可能性が高くなってしまいます。
孤独死の増加要因3:貧困の増加
以前は高齢者と言うとお金を持っているイメージがありましたが、今は違います。
年金の受給額の減少や、社会から孤立しているため金銭的に頼れる家族がおらずお金に困っていても誰にも相談することができなくなっています。
体調が悪くても医療費が払えないなどの理由で普段から病院に行かず、手遅れになるまで病気を放置していたり、手遅れになっていても気付かずに放置されていることがあります。
突然具合が悪くなってしまい救急車を呼ぼうとしても、その後の治療費を考えたら救急車を呼べず、手遅れになってしまうなど貧困からくる孤独死も増加しているとされています。
また、若年層での貧困も顕著になっています。正社員として働いていても十分なお金をもらえず、貯金ができない人も少なくありません。
健康で働けるうちはいいですが、病気などをして休職・退職せざるをおえなくなるとすぐに貧困にあえぐことになります。そして餓死などにより自室で死んでしまう事になるケースも少なくありません。
孤独死の増加要因4:パラサイトシングルの高齢化
パラサイトシングルとは、社会人になっても親元で生活をし、経済的にも精神的にもいつまでも自立せず、家事など生活全般を両親に依存している独身者のことを指します。ネットでは「子供部屋おじさん」と呼ばれることもあります。
パラサイトシングルは親が要介護となってしまった時に、親の面倒を見切れずに共倒れになってしまう可能性や、親の資金が尽きてしまい共倒れになってしまう可能性があります。
またパラサイトシングルの方は、今までの人生で面倒くさいことは全て親任せにして解決してきたため、一人での問題解決能力は著しく低いです。
そのため親が死んでしまうと突然なにもできなくなってしまい、本人はそんなつもりがなくても孤独死になってしまう傾向が強いです。
孤独死の増加要因5:鬱病などの精神疾患の増加
鬱病などの精神疾患があるために外に出る体力や気力が湧かずに、部屋に引きこもって何もできずに餓死をしてしまうケースも増えています。特に鬱病や精神疾患などによる孤独死は若年層で多くなっています。
自分の生活習慣や栄養状態、住宅環境が異常だと気が付いていても改善する気力や周囲に助けを求める気力のない状態であるセルフネグレクトになってしまう人もいます。そのまま体調が悪化しても病院へ行かずに放置したり、生活習慣を改めないことが多いです。ゴミ屋敷で餓死などにより孤独死を迎えてしまうことがあります
孤独死の増加要因6:地域のコミュニティのつながりが弱くなっている
以前は地域のコミュニティのつながりが今よりも強い傾向にありましたが、特に都心部では人の入れ替わりが激しくなっていることから地域のコミュニティのつながりが弱くなってしまっています。
その結果として一人で暮らしている高齢者の方が社会とのかかわりを持つ場が少なくなっており、より孤立しやすい社会になっています。
また近隣住民も孤独死をする可能性の高い人を意識してい守ることができないため、孤独死の防止も難しくなっています。
まとめ
今回はどうして孤独死が年々増えているのかを解説していきました。
高齢者が孤独死をする可能性は、若者が孤独死をする可能性よりも高いです。
しかし、うつ病やセルフネグレクトなどの精神疾患の普及により、若年層でも孤独死をしやすくなっています。
皆さんも自分でできる範囲で自分や身近な人の孤独死の対策をしてみてくださいね。
この記事の執筆者
webメディア系の会社、コンサルティング会社に勤務後、現在はフリーランスのライターとして活動中。ライティングの際は現地取材を徹底して行うなど現場に密着した記事がウリ。得意ジャンルは政治経済、暮らし・ライフスタイル。特掃ジャーナルにも複数の記事を寄稿中。