ひきこもりが高齢化している現代の「8050問題」とは?高齢化と孤独死の関係を詳しく紹介!

孤独死 引取拒否

最近は良く耳にする「8050問題」。高齢者や中高年のひきこもりに関する言葉として、ふんわり理解している方も多いと思います。実はそんな8050問題は深刻な社会問題で、これからの日本人は誰しもがそのリスクに直面しうる可能性があります。今回はそんな8050問題と孤独死の関連性について分かりやすく説明していきます。

8050問題とは?

タイトルにもある「8050問題」とは、「80代」の親が「50代」の子どもと同居して、生活を支える状態です。8050問題と呼ばれる状態においては、80代の親世代は50代の子供を経済的にも家庭的にもあらゆる面でサポートしています。

8050問題について補足を入れると、必ずしも親が80歳前後、子どもが50歳前後と決まっているわけではありません。ひきこもりの子どもの高齢化、それを支えてきた親も高齢化してきていることを問題視した、「中高年ひきこもりを抱える世帯」を象徴した言葉になります。

この8050問題が深刻化するにつれて、高齢化していく親子が社会的に孤立してしまう、親の年金に頼って生活していた子どもが親の死後に経済的に困窮するといった事態が増えつつあるのが、悲しいですが日本社会の現状です。

8050問題における中高年の引きこもり。原因はどのようなもの?

内閣府の『生活状況に関する調査(平成30年度)』によると、中高年の方が引きこもりになった理由は「退職」「人間関係」「病気」「職場に適応できなかった」などが挙げられます。

退職や職場に適応できなかった理由が多いことから、仕事を辞めてそのまま引きこもりになるケースが多いことが読み取れます。特に、40代前半の方の場合、就職活動の時期に引きこもり始めた人が多いようです。その要因として、この世代が10代後半~20代前半の頃に就職氷河期が到来してしまったことが考えられます。当時の若者は働きたいものの就職活動がうまくいかず、そのまま自宅で無職状態となり、引きこもりになってしまった人が多いのでしょうか。また、運が良く就職できたとしても非正規雇用や派遣社員での就業が多く、急な雇い止めが多く発生してしまっておりました。正社員で働いていても、長引く不況によりリストラや会社の倒産で職を失った人も大勢います。

『生活状況に関する調査(平成30年度)』では、40~64歳のひきこもり推定数のうち70%以上は男性だとされています。男性は女性よりも仕事を重視している傾向があるので、突然仕事が無くなってしまったショックで現実を受け入れられないなど社会との接触を自ら断ってしまうことなども考えられるでしょう。

このような中高年のひきこもり、それを世話する80代以上の親という社会的に孤立しまいがちは家族関係は、孤独死を引き起こしてしまうリスクがかなり高いことが垣間見えます。

8050問題だけではない。老老介護も大量発生しています。

8050問題が中高年ひきこもりを抱える世帯のこと示す言葉であることに対して、老老介護とは65歳以上の高齢者を65歳以上の高齢者が介護している状態のことです。主に「高齢の妻が高齢の夫を介護する」「65歳以上の子供がさらに高齢の親を介護する」などのケースが多いです。2013年に厚生労働省が行った国民生活基礎調査では、在宅介護をしている世帯の51.2パーセントが老老介護の状態にあるという結果が出ました。

また認知症の患者を認知症の患者が介護する認認介護も近年増えており、2010年に山口県で行われた調査では、山口県内で在宅介護を行っている世帯の10.4パーセントが認認介護状態にありました。

一般的には高齢になればなるほど体の自由が利かなくなるため、介護者の肉体的な負担が増えていきます。若い人が介護をしていても腰痛などに悩まされることは少なくないため、介護者が高齢の場合はさらに体の負担になります。介護を続けることは精神的な負担も少なくありません。介護のストレスから被介護者への虐待行為に結び付くケースも少なくありません。高齢者が高齢者を介護している場合、肉体的・精神的な限界を迎えてしまうと介護者本人も介護が必要な状態になり、「共倒れ」状態になることも考えられます。

強いストレスは認知症を引き起こす原因になる可能性が高いという研究結果もあります。特に周囲から孤独している老老介護の世帯は、認認介護に転じやすいと言われています。

生涯未婚率が上昇していることや出生率が下がっていることなどから、今後若い世代の人口はどんどん減っていくことが予想されています。また国民の平均寿命が延びていることから介護が必要な人口は増加していくと予測されており、老老介護になる世帯数が今後も増えていくと予想されています。

まだまだ沢山ある高齢化社会と孤独死の接点。

核家族化

夫婦のみの家庭や夫婦と未婚の子供による家庭が増えており、従来の三世帯同居などは珍しくなっています。
三世帯同居家庭では高齢者の具合が悪くなった場合に、すぐに同居している家族が気付くことができました。核家族化している現在の日本では、高齢者は夫婦または一人で暮らしていることが多いため、具合が悪くなっても配偶者しか対応してくれる人がいない老老介護になりやすい傾向があります。また一人暮らしの場合、具合が悪くなってしまうとますます誰にも気がついてもらえずに孤独死につながってしまうことが少なくありません。

晩婚化や生涯未婚率の上昇による少子高齢化

年々日本の人口における高齢者の割合が増えており総務省の統計では2020年度の高齢者の割合は28.7%となっており、人口は3617万人です。核家族化などの影響で高齢者の人口が増えているだけでなく、高齢者の一人暮らしも増えているため孤独死をしやすい属性を持つ人の人口が年々増加しています。内閣府による『平成29年度版高齢白書(平成29年度版)』では今後も高齢者の人口は増えていき、2042年に日本の高齢者人口はピークを迎え、3,935万人になるだろうと予想されています。

晩婚化によって子供を産まない選択をする夫婦の増加や、ずっと未婚の男女が増えていることで子供の出生率が減っています。必ずしも自分の子供が介護などの頼りになるわけではありません。しかし子供が心配をすることで安否確認を頻繁にするなどして、孤独死や社会からの孤立を防ぐこともできます。また高齢者になってから金銭面に困ったときに、子供に援助を頼むという選択肢もありますが、子供がいないと更に社会から孤立しやすくなってしまうため、孤独死をする可能性が高くなってしまいます。

社会構造の変化による貧困の増加

以前は高齢者と言うとお金を持っているイメージがありましたが、今は違います。
年金の受給額の減少や、社会から孤立しているため金銭的に頼れる家族がおらずお金に困っていても誰にも相談することができなくなっています。また超高齢化社会では、現在の日本の社会保障システムを維持することはできず、年金の受給年齢がもっと後倒しになる可能性もあります。

またAIの台頭などにより、従来までは人間がやっていた仕事を機械が代わりにやる場面も増えてきました。AIなどに仕事を取られてしまう事で仕事を失ってしまうことなどによる貧困も危険視されています。

パラサイトシングルの高齢化

パラサイトシングルとは、社会人になっても親元で生活をし、経済的にも精神的にもいつまでも自立せず、家事など生活全般を両親に依存している独身者のことを指します。ネットでは「子供部屋おじさん」と呼ばれることもあります。パラサイトシングルは親が要介護となってしまった時に、親の面倒を見切れずに共倒れになってしまう可能性や、親の資金が尽きてしまい共倒れになってしまう可能性があります。

またパラサイトシングルの方は、今までの人生で面倒くさいことは全て親任せにして解決してきたため、一人での問題解決能力は著しく低いです。そのため親が死んでしまうと突然なにもできなくなってしまい、本人はそんなつもりがなくても社会から孤立をしてしまう傾向が強いです。

鬱病などの精神疾患の増加

鬱病などの精神疾患があるために外に出る体力や気力が湧かずに、部屋に引きこもって何もできずに餓死をしてしまうケースも増えています。特に鬱病や精神疾患などによる孤独死は若年層で多くなっています。

自分の生活習慣や栄養状態、住宅環境が異常だと気が付いていても改善する気力や周囲に助けを求める気力のない状態であるセルフネグレクトになってしまう人もいます。そのまま体調が悪化しても病院へ行かずに放置したり、生活習慣を改めないことが多いです。ゴミ屋敷で餓死などにより孤独死を迎えてしまうことがあります。

地域のコミュニティのつながりが弱くなっている

以前は地域のコミュニティのつながりが今よりも強い傾向にありましたが、特に都心部では人の入れ替わりが激しくなっていることから地域のコミュニティのつながりが弱くなってしまっています。一人で暮らしている高齢者の方が社会とのかかわりを持つ場が少なくなっており、より孤立しやすい社会になっています。

放っておくと孤独死の大量発生も。早急な対策が求められます!

8050問題といった社会的に大きな問題となっているものは孤独死の間接的・直接的な原因でもあります。8050年問題やその他の社会的問題を放置してしまうと今後も孤独死の割合が増加していくと考えられており、また団塊の世代が高齢者になったときに孤独死の数が大幅に増えると言われています。早急に対策をしないと、多くの高齢者が孤独死をする恐怖を抱えながら生活をする社会になるでしょう。

まとめ

8050年は自分には関係ないと思っている方も多いのではないでしょうか。自分は違うと思われていても、高齢化という社会の大きな波は着実に日本を飲み込みつつあります。自身や社会の維持、日本という国の存続、孤独死を大量に出さないためにも社会的な構造を見直す時が来ているのでしょう。

この記事の執筆者
兼島剛
webメディア系の会社、コンサルティング会社に勤務後、現在はフリーランスのライターとして活動中。ライティングの際は現地取材を徹底して行うなど現場に密着した記事がウリ。得意ジャンルは政治経済、暮らし・ライフスタイル。特掃ジャーナルにも複数の記事を寄稿中。